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■村田雄司(むらた・ゆうじ)
東京理科大学理工学部電気工学科教授。理学博士。静電気工学、絶縁体電気物性専攻。
昭和15年生まれ。昭和43東京理科大学大学院理学研究科修士課程修了。同大学助教授などを経て教授に。著書に「表面・高分子と静電気」「静電気の基礎と帯電防止技術」などがある。 |
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── まずは静電気の基本的な仕組みについて教えてください。
村田先生
二つの異なった物質を接触・摩擦させると、一方の物質は+の電荷を、もう一方の物質は−の電荷をそれぞれ帯びることになります。これは物質を構成している原子のなかの電子(−極性)が接触界面を通して移動するために起こる現象で、この物質表面間の電子移動の優先順位は結果として摩擦帯電系列を作る原理になります。
例えばガラスとウールとでは電子はガラスからウールのほうに移動し、ガラスは+に、ウールは−に帯電します。また帯電系列上で近い位置にあるもの同士で接触・摩擦した場合は比較的帯電量が少なく、遠くなると帯電量が大きくなるという傾向が見られるのです。この帯電した状態で物質同士を離すと、一部の電子は元の物質表面に戻りますが、一部は移動したままの状態で相手物質表面に滞留します。これが静電気と呼ばれるものの正体なのです。
静電気が物質表面に多く溜まりすぎると、反対極性に帯電した物質を近づけた場合に均衡を保とうとして強い放電現象を引き起こし、ときには引火・爆発の原因ともなったりします。したがって工場内では特に静電気をあまり滞留させず、発生したそばからすぐに減衰させていく環境づくりと工夫が必要といえるでしょう。
── 一般に高湿下では静電気の発生量が少ないといわれていますが、そのメカニズムについてはどうでしょう。
村田先生
確かに静電気は湿度が高いと発生量が少ないといわれていますが、正確には発生量が減少しているのではなく、高湿下では漏えい作用が活発で、発生した静電気が帯電体の表面を伝わって素早く漏洩し、あるいは大気中に逃散しているからです。すなわち、湿度が高くなると物質の表面の吸着水分量が増すために表面の電気伝導性が向上し、電荷漏洩の速度が速くなるわけです。大気中への逃散のメカニズムはまだよく分かっていませんが、この現象は実験的に確かめられています。
── その点では、乾燥状態の続く冬場の工場内における加湿対策は静電気防止に大いに貢献するといえそうですね。
村田先生
加湿対策が静電気抑止に威力を発揮するのは間違いのないところでしょう。一般に相対湿度を50〜60%以上に設定しないとその効果ははっきりしない場合が多いようです。扱う製品の種類や工場内の設備状況などによっては70〜80%台に上げなければだめなケースもあります。ただし材料の腐食や作業者の不快感が増すなど湿度障害の恐れも出てきますから、ケースバイケースで判断すべきです。
また湿度を上げても吸湿性のないPTFEなどの材質を扱っている現場では効き目はそれほど期待できません。したがって加湿とともにほかの対策を組み合わせてより効果を上げるための手立てを講じることが肝心だといえるでしょう。
── 例えばどんな対策があるのでしょうか。
村田先生
基本的な静電気対策の考え方としては、静電気の発生を極力抑える、発生した静電気を速やかに漏洩させ、滞留させない、危険個所で火花放電させない、帯電体が接近しても影響を受けないようにシールドするなどがあります。
具体的な方法としては製造現場・保管場所では導電性の資材を使用し、必ずアースをとるとともに、静電気発生の予測が可能な場所では除電装置を導入し、常時除電を行うことが大切です。また導電性床材を使用すると共に導電靴の着用も効果的といえるでしょう。特殊な作業では、人体を直接アースするリストストラップを使用することもあります。
さらに放電を防ぐためには絶縁物を現場に持ち込まないことも重要なポイントとなります。というのも、静電気は絶縁体の表面に溜まりやすい性質があるからです。これは絶縁体の表面に電流を運ぶ電荷担体が少ないということなどに起因するのですが、この特性により、一端その表面に発生した電荷は静電気として滞留してしまうわけです。そうして、どんどん溜まった静電気は導体が接近すると条件がそろえばスパークしてしまいます。したがって絶縁物を特に危険個所に持ち込むことはできるだけ避けるべきでしょう。
以上、静電気対策上のヒントをいくつか提示しましたが、優先順位として真っ先に取り組むべきは加湿でしょう(ただし、製造現場によっては常時調湿されている所もありますので、その場合はその次の方法になります)。まず加湿対策を施したうえで、状況に応じてほかの対策を取り入れることで、万全な体制を整えていくことが肝要です。 |